今回の民法改正で不動産賃貸業で影響を与える3つのポイント

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民法改正

保証ルールの改正

賃貸借契約に個人保証をつける場合には、保証人が責任を負わされる最大限度額を契約で定めておかなければ、保証契約は無効となります。

事業のために物件を賃借する場合に個人保証をつける場合は、賃借人が自分の財産状況について保証人に説明をしなければ保証契約が後で取り消されることがあります。

賃貸借ルールの改正

敷金に関する規定が新設されたことで大きな話題となりましたが、それ以外にも、例えば賃貸物件を売却したときの敷金返還義務はどうなるのか、通常使用による賃貸物件の原状回復義務について賃借人にあるのか賃貸人にあるのか、賃貸人が修繕義務を負わない場合、賃借人の修繕権、物件の一部が使用できなくなった場合の家賃はどうなるのか、賃借人が物件に備え付けた物は退去時にどうなるのか、賃借人が物件の使用方法についてルール違反したことが原因で生じた損害賠償請求権の消滅時効期間等について今回初めて明文化されました。

重要なポイントは、今回の改正内容を知るだけ終わりにするのではなく、改正による効果が強制される強行規定なのか、契約がない場合にどうするかを定めるに過ぎない任意規定なのかを押さえる必要があります。

例:

敷金をいつ返還するべきなのか初めて定められたが、それ以外の時期に返還する契約を締結した場合、それは有効か無効か。

通常使用による損耗は賃借人に原状回復義務はないと定めたが、それとは異なる契約を締結できるのか。

その他のルールの改正

法定金利が固定制から変動制になって改正民法が施行される時は、まず年利3%となりますが、これは滞納家賃の請求において遅延損害金の利率に影響を与えます。

その他にも将来の家賃請求権を担保に入れられることが規定されたり、滞納家賃の支払い請求をしたところ、その一部しか払われなかった場合であっても賃貸借契約を解除できないことがあり得るなど不動産賃貸業を行う者にとって影響を与える改正が行われています。

民法改正にどう対応すべきか

不動産賃貸業に大きな影響を与える改正について簡潔にまとめました。

賃貸借について

  • 物件を売却した際の敷金の返還義務
  • 通常損耗の原状回復義務
  • 賃貸人の修繕義務の範囲
  • 賃借人の修繕権
  • 一部使用不能時の家賃
  • 賃借人が取り付けた物の退去時の取り扱いについて
  • 損害賠償請求権の消滅時効

保証について

  • 極度額
  • 保証範囲の確定
  • 保証人の取消権
  • 賃貸人の説明義務

その他について

  • 法定利率の変動性
  • 将来の家賃債権の担保化
  • 家賃不払いと契約解除について
  • 時効の完成猶予

賃貸人、賃借人、連帯保証人、賃貸不動産の仲介業者や管理業者、ディベロッパー、家賃保証業者など、不動産賃貸業に関わるすべての者は、今回の民法改正で自分達にどのような影響があるのかを正確に把握して今回の改正に備えるべきだと私は考えます。