建物賃貸借契約を解約又は解除する際には、退去立ち会いが必要です。
退去立ち会いは何のために行われるのか?
引っ越しまでの間に何をすればいいのか?
実際の退去立ち会いの流れ等、知っておくべきポイントをまとめてみました。
退去時の立ち会いは、なぜ必要なのか?
賃借人には原状回復義務がある
通常、建物賃貸借契約では、賃貸借契約終了後に賃借人は物件を原状に回復して明渡さなければならない旨が規定されています。
建物賃貸借契約が終了し、賃借人が建物を退去する際に物件の現況を確認し、退去に伴う原状回復工事の負担を賃貸人と賃借人のどちらの負担とするのかを明確にするために退去立ち会いは行われます。
賃借人には「善良な管理者としての注意義務(民法第400条)」がある
賃借人は、賃借物件を善良な管理者として注意を持って使用する義務を負っています。
日常の清掃や退去時の清掃は賃借人の善管注意義務に含まれます。
タバコのヤニ汚れや結露やカビを放置したことによって生じたシミや腐食などは善管注意義務違反に該当します。
不注意や過失で破損や汚損した場合は、管理者としての義務を怠ったとして賃借人の過失となり、原状回復義務を負い、その修繕費用は賃借人負担となります。
経年劣化、通常使用の範囲内で生じた損耗は原則賃貸人負担
経年劣化や通常使用の範囲内で生じた損耗は善管注意義務違反にはなりません。
特約で、経年劣化や通常損耗分の修繕義務を賃借人に負担させる特約が定められる場合がありますが、賃借人が修繕費用を負担することになる通常損耗及び経年劣化の範囲を明確に理解し、それを合意したものと認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されている場合は賃借人負担となりますが、次の要件を満たすことが要求されます。
1.特約の必要性があり、暴利的でない等の客観的、合理的理由が存在すること
2.賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3.賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
賃借人は、①故意・過失、②善管注意義務違反、③その他通常の使用を超える使用による損耗及び毀損を復旧しなければならないのです。
退去立ち会いまでに準備するべきこと
建物賃貸借契約の解約を通知する
引っ越しが決まったら、賃貸人及び管理会社へ連絡します。
多くの場合、1ヶ月以上前に解約通知をする必要があり、賃料等は日割り計算となります。
日割りの計算式については、様々なパターンがあるので契約締結前に確認しておく必要があります。
解約通知書はレターパック等の記録に残る方法で郵送するのがベターです。
貸す側の立場から言うと、退去予定日が早くわかっていると、空き予定物件として次の入居希望者を募ることができるため、早めに解約通知してもらえると助かります。
退去立会日は解約日よりも前であれば引っ越し日と同一である必要はありません。
ライフラインの使用停止&移転手続きをする
退去立ち会い日を最終使用日として、ライフライン(電気、ガス、水道)の使用停止手続きを完了させてください。
電話やインターネット回線も解約もしくは移転手続きを完了させてください。
賃借人負担の費用について精算する
賃料、共益費や諸経費、電気、ガス、水道料など、賃借人が負担する費用について滞納がある場合、全額精算しておく必要があります。
退去立ち会い時の持ち物
・建物賃貸借契約書
・入居時の物件の状況をチェックした書面や写真など
退去立ち会い後の流れ
退去立ち会いの後、退去精算書が送付されます。
室内・設備の傷や破損のうち、賃借人負担となる修繕について、項目や見積もり内容を確認してください。
内容に争いがない場合、敷金の預かりがあれば敷金から負担分を相殺し、残金があれば後日振込みにて返金され完了となります。
修繕工事費用が敷金を上回る場合は、不足額を支払います。
入居時に物件の状態をチェックすることの重要性
建物賃貸借契約は、契約期間が長期にわたることが多いことから、賃貸人、賃借人双方の記憶だけでは損耗等の箇所や発生時期等の事実関係についてトラブルになりやすいため、事実関係を明確にしてトラブルを未然に防ぐ必要があります。
そのために入居時及び退去時に損耗や毀損の有無や物件の状況をチェックする書面を作成し、当事者が立ち会いのうえ、十分に確認する必要があります。
後で訴訟等になった場合を想定してチェックリストを作成し、該当箇所を写真に残しておきましょう。
退去立ち会いや敷金の精算をスムーズに行うために、入居前にあった傷等を把握し、誰でも状況を把握できるように書面及び写真を残しておくことが重要です。